ガリフの地

かつてオキューリアは、さまざまな者に破魔石を託し歴史をあやつってきた。長い歴史のなかでは、ヒュム以外の種族、ン・モゥ族、ヴィエラ族の手に破魔石が託された事もあった。しかし、温厚であり力を望まないン・モゥも、ミストに過敏すぎるヴィエラも、その破魔石の力を制御する事は出来なかった。
フランがそのことを知っていたかどうかはわからない。
彼女の言葉はいつも、まるでその古い過去を彼女が見てきているかのように、いつも、真実性があり、そして謎めいていた。
バルフレアがそんなフランを信じていたからだろうか。アーシェもフランの言葉をよく信じた。
そして彼女とバルフレアの案内で、広いオズモーネを抜け、ガリフの地ジャハラに到着した。


ガリフの最長老ウバル=カは、アーシェから渡された暁の断片を手にし、何やら少し驚いてアーシェを見つめた。
「・・・・そなた、この破魔石を使ったのだな?」
アーシェはウバル=カの問いかけに、肩をおとして力なく答えた。「・・・・私ではないのです。私には扱い方がわからず、それで・・・・」
うつむくアーシェを見つめ、「ほう、どう使うのか知らんのか」そしてウバル=カも、残念そうに深いため息をついた。「・・・ならば、ガリフと同じよの」
ウバル=カの言葉を聞いて、アーシェはビックリして顔を上げた。
「往古、ガリフは神々より破魔石をたまわった。しかしガリフには破魔石を扱えんでのう。神々はガリフに失望して石を取り上げ・・・・ 今度は人間「ヒュム」の王に授けた。・・・王は、破魔石の力で乱世を平らげ、覇王と呼ばれた。」注意深く話を聞くアーシェを見つめながら、ウバル=カは続けた。「奇態なことよのう。覇王レイスウォールの血を引くそなたが、破魔石を扱えぬとは」
「待って下さい!」顔色を変えてアーシェが言った。「では、あなたは破魔石の使い方を・・・・」
「まことにお恥ずかしい。せっかく覇王の末裔にお会いできたと言うに、何ひとつ教えられん。・・・もっとも使い方がわかったとて、どうにもならぬよ」ウバル=カは答えながら、破魔石を手に取った。
「石は、長年たくわえたミストを放ち、力を失っておる」
破魔石は、本来の使い方を施せば、一度使っても再び使う事が出来る。 実際、レイスウォールは破魔石の力を制御し、何度も使った。リヴァイアサンにて人工の力で、無理矢理力を吸い取られた破魔石は 異質な力に抵抗し、暴走し、すべてのミストを出し切ってしまったのだ。
「・・・再び使えるようになるのは、そなたの孫の代かのう」ウバル=カの言葉に、アーシェはがっくりとうつむいた。
ヴァンが、その悲しそうなアーシェの横顔を心配そうに見つめていた。
「力の失せた、うつろな石・・・。飢えておるな。空しさを満たそうと、あらゆる力を求めておる。人の力、魔の力・・・・ 良き力、悪しき力・・・」ウバル=カは肩をおとすアーシェに向かって、諭すような口調で続けた。「破魔石を求める者は、破魔石に求められる者でもある」
その時、パンネロが、何かを感じてふと後ろを振り返った。そこに、嬉しそうにパンネロを見つめるラーサーが立っていた。
「・・・・ラーサー様」
パンネロも、嬉しさのあまり、立ち上がっていた。


  • FF12ストーリー あまい誘惑