バーフォンハイムの出来事

アーシェ達は、ドラクロア研究所を離れた後、バーフォンハイムのレダス邸に招かれていた。
オンドールがレダスに破魔石を奪取させるべく、ドラクロアに潜入させた話を聞かされ アーシェはショックを隠せない様子だった。
「おじさまは、やはり戦争を?」アーシェは恐る恐るレダスに訪ねた。
「・・・・ヴェインの思うつぼだ。解放軍とロザリア軍が出て行けば、破魔石でまとめて叩かれる」レダスはオンドールが戦争の意思があることを、そういった言葉でアーシェに伝えた。
「・・・・安心しろ。石はシドが持っている。つかまえて「覇王の剣」で石をぶっ壊せば、ヴェインの切り札は消えてなくなる」
口を挟んできたのはバルフレアだった。
彼は少し焦っているのか、シドの件もあったからなのか、機嫌も悪く「時間が惜しい。シドを追うぞ。アイツはギルヴェガンに向かっている」と、仲間を急かした。
「ギルヴェガン・・・・」アーシェが呟くように言った。
「ヴィエラの古謡にうたわれてるわ。”遥けき時の彼方にて、猛るミストに守られて、まどろむ聖地ギルヴェガン、至りし道を誰ぞ知る”」歌うようにフランも呟くと
「ヤクト・ディフォールだ。ゴルモア大森林のさらに奥。幻妖の森にミストの嵐が荒れ狂う一角がある」レダスが言葉を付け足した。
「じゃあ、そこだ。行ってみよう!」思った事をすぐに行動に移したがるヴァンが、早速、レダス邸を発とうとした。
「・・・あんたはいかないのか?破魔石にご執心だと思ったが?」意地悪い口調でバルフレアがレダスに言った。
「シドの言葉、素直に信じられん。オレは別の線を追う」
「へぇ・・・、他に心当たりか」
レダスとシドの会話を聞き、2人の間に何か因縁のある事に気づいていたバルフレアは レダスが何か隠しているのでは、と疑念を抱いていた。「・・・妙にお詳しいな」
「それはお前も同じだろうが」レダスもまたバルフレアが破魔石に固執する事を不審に思っていた。だからこそ、この時は、自分が研究所で得た情報を彼に伝えなかったのだ。

「早くしろよ!置いてくぞ」
そこへ、待ちわびたヴァンが戻ってきてバルフレアを急かした。
「おう、坊主。幻妖の森について調べさせている。部下に聞いてみろ」
「わかった。ありがとな、レダス」ヴァンはレダスの忠告に素直に答え、部屋を去っていった。
レダスは心を和ませ、微笑みながら「考えるより先に飛べ・・・・か。 弟子の方が空賊らしいな」
「誰が弟子だ」
レダスの言葉にムッとしたバルフレアは、フン、と鼻を鳴らして部屋を出て行ってしまった。
アーシェは、シドの事でバルフレアが心配で仕方なかったので、ずっとレダスとの会話を聞いていた。しかし、彼が去ったので、自分も部屋を出ようとした。
「・・・・アーシェ王女。正直に答えてくれ」
不意にレダスに呼び止められ、アーシェは静かに振り返った。
「シドの言葉が正しければ、ギルヴェガンで新しい破魔石が手に入るかもしれん。・・・あんた、いまだに石がほしいか?」
「力がほしいわ」アーシェは即答し、「・・・でも、恐ろしくもある。ダルマスカを守るには、何も恐れてはならないのに・・・」と、語尾を濁した。
「・・・ナブディスを忘れるな」そんな彼女に向かって、レダスは訴えるように語った。「オレが言えるのは、それだけだ」
バルフレアとの会話や、彼自身からナブディスという言葉を聞き、アーシェはレダスと破魔石との因縁に何かしらの謎があることに気づいていた。


  • FF12ストーリー あまい誘惑